ばかって言う君が好き。
「お仕事お疲れさま。」
「……お疲れさま。倫子は優しいなあ。」
「そうかな?」
彼が優しく私の頭をなでる。
「うん。俺の癒し。」
「変なの。でも私もね、この腕枕が癒し。」
彼の腕に左手で触れた。
「そんなに好き?」
「うん。大好き。」
「ふーん、じゃあさ。」
彼は撫でる手を止めた。
「腕枕これからもずっと俺にさせてくれる?」
「え、いいの?いいの?お願いします。」
自分でも目がキラキラしていることが分かるぐらい、彼の言葉は魅力にあふれていて、私はぺこっと頭をさげた。
「…意味わかってないね。」
「ん?腕枕でしょ?」
私の返事に彼はため息をはぁとついた。
「あーもう倫子の天然、ばか、あーほ。」
私の方に向けていた体をよそに向けていじけた彼。
「え?え?」
「だから!」
振り返った彼は耳までほんのり赤い。
「なんで照れてるの?」
きょとんと私は尋ねた。
「あーもう!」
彼は私を勢いよく抱きしめる。
ぼそぼそっと本当に本当に小さな声で
10文字程度の言葉を。
彼はすぐに離れて、またよそを向く。
私は私でいっぱいいっぱいで、何が何だかわからなくて。
「……直人、もう1回言ってくれない?」
なんて、、無茶ぶりを…
「はー?」
案の定、若干呆れた様子の彼が振り返ってきた。
私は手で顔を覆って、隙間から彼の顔をのぞく。
「倫子の返事聞いたら。
……で?」
詰め寄る彼。
「えっと…。」
なんて言えばいんだろう。
ドラマじゃセリフなんかなかった。
なんでセリフなかったんだろう、あったら勉強になったのに!
「やっぱりおあずけ?」
黙ったままの私に彼はおずおずと弱気に聞いてくる。
なんか言わなきゃ、早く、はやく。
でも言葉は全然でなくて。
だから、だから
手をはずして、
私は指でその答えを―――
ドラマの中の主人公のように、口元を緩めて。