ばかって言う君が好き。
「いっぱい買っちゃったね。」
「たまにはいいよ。」
私と直人、それぞれ左手と右手にいっぱい食材が入った買い物袋を振って、手を繋ぎながらお花見から家路についていた。
彼の肩に乗ったままの花びらが、お花見帰りだってことを物語っている。
スーパーの中でもついたままだった花びら。
私は鮭のお返しだ!とばかりに、気づかないふりをして今もこうして彼と歩いている。
いつ気づくだろう?
気づいたらどんな顔するだろう?
早く教えてよ!って怒るかな、それともしれーっとはらうだけかな。
彼が気づくまでどうか花びらさん、ひとりでに落ちないでね。
そんなことを考えてるとは思ってもないだろう彼は、私の歩幅にあわせてただ歩くだけ。
コンクリートの地面、車が2台ギリギリ通れるかぐらいの細い道。
通学路の標識が度々あって、電柱の足元には小さな野花が生えていたりする。
温かい風。裏通りで日陰になっているのに、ここでさえもうツーンとはりつめた空気もない。
子供の頃に感じた、お母さんの腕のなかみたいな、ぬくもりと安心を感じられる、そんな陽気。2、3匹集まって飛び交う蝶々も、春の訪れを喜んでいるみたいだった。
「お花咲いてるね。」
「本当だね。」
私は近所の人の花壇やら、道端にひっそりと生えた小さなお花を見つける度に、彼に「あ!」って言って指を指して彼にそう報告していた。
何度も何度も告げるから、うんざりしてもいい筈なのに、そうだね、って穏やかに笑ってくれる。
でもきっとこんな風に帰れてるのは、直人のおかげなんだろうな。
直人がいなきゃ、一歩一歩大事に大事に帰れてない。
早く帰りたい、そう思って 早足で何も気づかずトコトコトコトコ歩いて、もうとっくのとうに私、家に着いてる。
恋ってだから不思議。
ひどく辛いことがそのひとのおかげで、幸せに思えたり、明日も頑張ろうって原動力になっちゃったりもするのだから。