ばかって言う君が好き。
Jan
ゴーンゴーン―――新年を告げる鐘。
何回なっただろうか、回数が決まってるって誰からか聞いたことがある気がする。
「あけましておめでとう。」
縁側に座り、夜空を見ながら彼を思って呟いた。
「倫子?なんか言った?」
「何でもないよ、母さん。」
「早く、おそば食べちゃいなさい。」
父と母と姉と私の分を、私が小さいころから使っている古びた木の机にカタンカタン。
ゴーン、また一つ鐘がなる。
今年が始まって、
彼と初めて会えるのはいつになるだろう。
話せるのは?
デートは?
手をつなぐのは。
0時6分。
大きなエビ天が入っていた年越しそばを食べ終わる。
「ほんとあんたは食べ終わるの早いわねー。」
なんて母さんの小言を今年も聞いて、ああ新しい一年が始まったのだと今年も私は実感した。
携帯をチェックして、
12月31日 22時37分
やべー弟に殺されるw
12月31日 22時58分
弟がんばれ!笑
なんて最後にやり取りしたメッセージを読み、弟さんにいじめられているだろう彼の様子を思い浮かべて、私はくすっと笑いをこぼす。
「何笑ってんの、倫子。」
笑ったことに気が付いた姉からの突っ込みに、すっかり携帯をチェックする癖がついてしまったことを自覚してしまった。
「倫子、片付けるの手伝ってー。」
台所からの母の声。
「うん。」
携帯を机に置いて、音楽番組を見ている父と姉を横目に4人分のおそばを片付ける。
「さあ~寝るかな~」
明日もお仕事だという父。
「電話が来な~い。」
私と同様好きな人からの連絡を待つ姉。
「まったく。」
小言を漏らしながらも、優しく微笑む母。
リビングの電気をかたんと落として、寝室にもう父さん達は寝に行ってしまったから、お姉ちゃんと二人、真っ暗なリビングで、テレビを。
そのうち「あ、電話だ!」と顔をほころばせながら姉が自室に戻った。
よかったねと思いながら、始まったウェディングソングを私はそのまま聴く。
お姉ちゃんの好きな歌だった。