ばかって言う君が好き。
June
雨が降っていた。
もう梅雨入りの季節ですかなんて思いながら、水色の傘をさして出かける。
彼がいない生活ももう2ヶ月が過ぎた。
早いような遅いような、自分でもよくわからない。それでも週末がくる度、彼の思い出に頭が奪われる。
この時期はどこに行ったかな、どんな会話したかな。
彼がいたときはあっという間に週末がいなくなってしまう感覚だったのに、今はかえって処理に困っている。
家にこもりがちになることも少なくなかった。
「あっ。」
水たまりをぴしゃんと足に浴びてしまう。
そんな私の隣を楽しそうな若いカップルが通り過ぎる。
すれ違うどこかのカップルがうらやましくて、傘で見えないように視界を隠してしまう。
雨でよかった。
途端に思って、途端に消えたその思い。
変なの。
私、雨が嫌いだった筈じゃない。
歩きながら携帯を取り出して、連絡を確認する。
9時
『おはよう。今日は買い物へ行ってきます。』
送ったメッセージ。
お昼を過ぎても、既読はつかないまま。
彼は慣れたといいながら、やっぱりどこか気持ちも不安定なようで、休日もお仕事のことで頭がいっぱいみたい。
彼は決して大変だとか、お仕事の愚痴を言わないけれど、私はそうなのだろうなと思っていた。
「いらっしゃいませー。」
お気に入りのお店。買い物に来るときは、必ずここに立ち寄る。
スカート、トップス、流行りの可愛い服を眺めながら、おかしいかな、やっぱり彼の事を考えてしまっていた。
彼と次デートする時、この服をきたらどう反応してくれるだろう。
まだ次会う日も見当がつかないのに。
私は白いワンピースを手に取った。