ばかって言う君が好き。
Aug
「今年は一緒に祝おうって言ってたのにね……。」
「うーん、まあしょうがないよ。」
私の絞り出すような声とは反対に、彼の声にはまだ余裕があるみたいだった。
今日も彼と寝る前にテレビ電話をしている。だって今日は彼の誕生日だから。
「そりゃそうだけど――。」
彼があまり気にしていないのは確かに助かる。
でもやっぱり、大好きな人の誕生日は直接祝いたいわけで……。
「ほら、笑って。倫子は笑顔の方が似合うよ。」
浮かない顔の私を励ます彼。
「……そうだね。」
彼の為に笑わなきゃと、私は笑った。
「次会った時で、本当にいいの?プレゼント。」
「あーうん、いいよいいよ!送るのも大変だから。」
「そっか。」
ベッドに三角座りしていた私は、薄い黄緑色の花模様の掛け布団で顔を少し隠した。
「あ、また倫子顔隠すー!」
「だって、恥ずかしいじゃん!」
布団をもっとかけて、顔を隠す私。
目から下は布団で隠れて、私の目しか見えない。
「はあ~?じゃぁ俺も隠すよ、顔。」
そう言って、彼はまだ布団の上ではなく、
パソコンラックの椅子に腰かけていたので、手で顔を隠す。
「もう!直人は別に隠さなくていいから。」
「だったら、倫子も顔隠さないで。」
笑いながらそんなやりとり。
「もう結構テレビ電話してるのにね。
やっぱり恥ずかしくて顔隠しちゃうや」
私は布団をさげる。
「倫子はいつも隠すからなあ、
……すっぴん可愛いのに。」
意地悪な彼の表情。
「ばか。」
そういいながらも、少し喜んでしまう私。
そんな私を彼は笑って、かけていたメガネを外した。
彼も布団に入るらしい。