ばかって言う君が好き。

ガチャ

「おかけになった電話はただいま電波の届かないところにあるか」

「やっぱり……だめか」
 通話を終える。

ピンポーン
ちょっとして通知音が鳴った。

『どうした?
ごめん、今出れないんだよね…実家いてさ、難しい…。』


実家、もうついていたんだね。
久しぶりの実家だもんね、弟君たちと遊ばなきゃだしね。
忙しいよね。

でもでも、私にも少し時間とってよ……。

お仕事じゃないなら、
電話もLINEも、できる筈じゃない――――

文字にすることなく、私の言葉はどこかへ消えていく。
だけど、このままじゃだめだから、

最後、本当に最後、彼に私の気持ちを送る。

『ゆっくり過ごしてね。
直人忙しそうだけど、そんな頑張りやな直人が好きだよ。』
 …お願い、好きって返事ちょうだい。
すきってそう言ってくれたら私、また頑張れるから―――


ピンポーン

『ありがと。倫子も実家だろうしゆっくり過ごしな。』


「あ……。」
 既読をつけて、私はそのまま返事をしなかった。

美味しいご飯を食べて、おそばを食べて、年が明けて、彼から新年の挨拶が続けて送られて来ても。

ぴかぴか光る通知の明かりだけが私の部屋を照らした。

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