ばかって言う君が好き。

遠距離する前は、こんなはずじゃなかったんだけどな。

私達ちゃんと話し合って。
私の遠距離の経験のことも話して。

もしかしたら、この人とならうまくいくかもって。

結局、この人ともだめだったか…。
おかしくて思わず笑ってしまう。


この愛を失っていく感じ。
きっと直人も気づいてるでしょう?

別れたい、そう言いたくてもそう言ったら、私がだだをこねてまた面倒なことになるから、離れたくても離れられないんでしょう?


『気にしないで。
電話もいいよ。早く休みなね。』


でも、私言わないわ。
別れようなんて言わない。


「好きじゃない、好きじゃない。」
 嗚咽紛れに一人、つぶやく。

直人のこと、なんて

「好きじゃない、好きじゃない。」


――――好き


言う言葉と思う言葉は正反対で。

でも、私はこの人のことを忘れなくちゃならない。
私から告げないと、この人ずっと私に縛られてしまう。

でも直人、ごめんちょっと待ってほしいの。
あと少し、もう少しであなたのこと忘れられるから、


お願い。


あと少しでいいの、
嫌いになる準備を

笑って、幸せだったよってあなたに言えるように、もう少しだけ時間をください――――。


 その夜、私は夢を見た。
直人と喧嘩をする夢だった。

わめいていた、泣いていた、怒っていた。
涙は流さないけれど、直人も泣いていた。

ああ、夢の中でもすれ違っているのかと、私はまた泣いた。

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