君に触れたい……。
彼女とは何度か話したことがある。


少なくとも名前はお互いに覚えていた筈だ。


なのに、綾崎は本当に分からないようで、怪訝な、不安そうな表情で俺を見ている。


「ん? 覚えて、ない?」


と問う俺に、綾崎は申し訳なさそうに小さく頷き、言う。


「私……、自分が誰なのかも判らなくて……。どうしてこんな所に居るのかも、判らないの……」
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