スキ・泣き・恋


「お疲れ様です!」





旅館の女将さんみたいな人が現れた…。










「葉山君…!
高そうな旅館に泊まったりして大丈夫なの?」








広くって綺麗で、金持ちの人が来そうな旅館…。









「平気!
それより、部屋がもっと驚くかも…!」








イヤー?





ここだけでもびっくりなのに…!









「こちらが葉山様の部屋です!」








「有難う!」








すごーい!










「普通が2つある…!」








しかも、ドアまでついて!









「気にったか?」









「凄く!」








葉山君がこんな旅館があるなんて知らなかった…!








「ねぇ、葉山君!
私、葉山君に旅館の費用渡さなくってもいいの?」








こんな広くって、高そうなのに…!









「和泉が気にする事じゃない…!
それに、ここはよく来るから!」










よく来るって?








コンコン〜









「いらしゃいませ!
女将の日下部かやです!」








日下部?




「静奈の名前と同じ…!」







「当たり前だ!
静奈の母親でもあり、俺の母親でもある…!」






えっー!






「静奈と葉山君のお母さんって、旅館の女将さんなんだ…!」







初めて知った…!








今まで聞いたことなかったし…!






「勇!
久しぶりですね…!」








葉山君のお母さんと別れてからずっと会ってなかったんだ…!








「あぁ!
そうだな!」





あの顔はなんで?






「じゃ、私は失礼します!」








ガラ〜








「ねぇ、葉山君!
別れてからずっとお母さんと会ってなかったの?」






久しぶりって言うてたし…!







「そうだよ!
クソ親父が悪いんだ!仕事、仕事ばかりで、オフクロを構わないから余計に…!」






それで別れたんだ…。







「別れた親父はオフクロがいなくなったら、すぐに新しい母親を見つけた!
クソも何もない!」








「は、葉山君!」






だから、お父さんに従いたくないんだ…。






「って悪い!
暗い話しして!」







あんな悲しそうな葉山君初めてみた…。








「泣いていいんだよ…!」






ずっと我慢し続けてたんだと思う…。







「うぅー泣」







「葉山君!」






何時間、私達はこうやって抱きあってたのかわからない位に抱きあっていた…。







「カッコ悪いな!
男が泣いたりして…!」







カッコ悪くないよ…!





「…い、和泉!」







コンコン〜






「ご飯の支度をさせていただきます!」






若い女の人が入ってきた…!





「あっ、ハイ、スミマセン!」






泣いてる所を見られた…!






「ねぇ、葉山君!
お風呂入って来たら?」






すっきりするかも知れないし…!







「…
そうしてくるわ…!」






ガチャ〜








行っちゃた…!








「勇おぼちゃま、色々苦労してる割にはだいぶは明るくなったみたいですね?」






昔の葉山君って知らないからそうなのかな〜?






「あ〜の?
昔の葉山君ってどんな人だったんですか?」









私、知りたいかも…!






「私の知ってる勇おぼっちゃまは暗くって、あまり喋らない、大人しかったから!」





初めて会った時もそうだった…。







真面目に本ばかり読んでたし…!






ガラ〜






ヤバ、帰ってきた…!






「今の話は内緒ですよ…!」






「…はい!」





「何の話してるの?」





「ひ・み・つ!」




秘密が気になってる…。















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