【B】きみのとなり


おいおいっ。
一難去って、また一難かよ……。


ため息しか出て来ねぇ。



二人で会いたいって、どうすりゃいんだよ。


脳裏ではチラチラと氷夢華の顔が浮かぶものの、
一人になって、孤独を強く実感した時の辛さも知らないわけじゃなくて、
即答できないまま過ごしてしまった。




ケアセンターでの業務を後にして、まだ休憩時間が残っているのをいいことに
院長邸へとそのまま足を伸ばした。




「まぁ、嵩継君お昼は食べたの?」



突然の訪問にもかかわらず迎え入れてくれたリズ夫人は、
何よりも先に昼飯のことを気遣ってくれる。



「あっ、まだです。
 さっきまで外来の後、ケアセンターに顔出してたんで」

「そう……私も今日は午後から、ケアセンターの皆との歌声を響かせるわよ」


リズ夫人はそう言うとダイニングにいってオレの昼御飯を作り始めたみたいだった。



リビングのソファーには遅れていた研修を取り戻すかのように、
書籍を広げて勉強している勇人の姿があった。



「よっ、頑張ってるみたいじゃねぇか」

「入院でだいぶん研修が遅れてしまったから。
 っと言っても、まだ実習復帰にはもう少し時間かかりそうです。

 一応、杖をなくても歩けるようにはなったんですけどね。
 まだ安心して仕事に復帰できるところにまで行かなくて」

「焦るな焦るな。
 ここまで回復しただけでも上等だよ。

 ったく、世話やかせの弟だよ。お前は」



そう言いながら、アイツの隣へと腰をおろした。



「嵩継さんも良かったですよね。
 氷夢華さんと和解出来たみたいで。飛翔が教えてくれました」


次の瞬間には、勇人の方が主導権を奪いやがる。
ったく、こんにゃろう。


早城も余計なこと、吹き込みやがって。

けど、こうやって弄られるのも、悪くねぇ。
慕われてないと、こんな時間過ごせねぇよな。
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