【B】きみのとなり
「なぁ、寂しくなったらケアセンターにボランティアで来いよ。
そしたら、時任の寂しさも少しずつ埋まるかも知んねぇぞ。
あの場所な、大切な人を失くした残された人が、
ボランティアとして登録して、次の人を支えてくれるそんな場所なんだ。
だから……あの場所には、本当に笑顔がこぼれだしてる」
そう……。
あの場所は残していく人と、残される人。
そんな二人を支える残されたボランティアスタッフたち。
そんな優しさの輪が、ループし続ける空間。
ふいに、時任の部屋のチャイムが鳴り響く。
チャイムの音に反応して玄関へと近づいた時任が、
驚いたようにその場に座り込んでしまった。
「おいっ、時任?大丈夫か?」
話しかけるも、アイツはうずくまって泣いているみたいだった。
アイツの代わりに玄関を開けると、
玄関の向こうには懐かしい男が顔を見せた。
「お前……衣笠?」
衣笠は、その場にうずくまってた時任に駆け寄ると、
アイツを抱き上げて立たせるようにして奥へと入っていった。
部屋の床に時任を支える様に座る衣笠。
「夏海、親父さんが亡くなったこと知った。
なんで知らせなかった?」
衣笠はオレなんて視界に入ってないように話し出した。
二人がお互いに話し合ってる会話を聞きながら、
オレは話が終わるタイミングを待ち続けた。
同期だった衣笠は時任の親父さんの病院を受け継いだ存在だったらしい。
まぁ、やり方は多少強引で時任の誤解を招くようなやり方だったらしいが、
衣笠にとっては、時任ごと受け入れるための準備だったらしい。
がっ、誤解してこじれた時任は、飛び出して行方を消した。
おっ、なんか、こっちもおさまるところにおさまってんじゃねぇか。
「おいっ、お二人さん……なら、オレ帰るわ」
少し大きめの声で告げると、衣笠がオレをじっくりと捉えた。
「おっ、お前、安田かぁ?」
って、今更かよ。おせぇーよ。
「衣笠、久し振り」
「えっ、んで、なんでお前が此処に居るの?夏海んち?」
衣笠は不思議そうにオレと時任を交互に見る。
「嵩継君、お父さんの主治医だったのよ。
私も再会してびっくりしたの」
時任は、そういってオレを衣笠に紹介した。