【B】きみのとなり

1.プロポーズ 前編 -氷夢華-


兄貴と付き合いだして一年以上。
もうすぐ、兄貴と再会した季節が近づいてくる。

一人残された兄貴のベッドで、
裸のまま兄貴の匂いが残る掛布団へと丸まる。


あぁ、もう行っちゃったんだ。





三日ぶりに帰ってきた兄貴がソファでテレビを見てたアタシに、
倒れこむように抱き着いてきた。

何かを欲するように抱き着いてくる兄貴は、
何処か泣きそうな顔をしていた。


滅多にアタシを抱かない兄貴が無意識にアタシを抱こうとするのは、
助けられなかった命があった時なんだと気づけるようになった。

助けられなかった命に対して自身を責め続ける兄貴に、
アタシはゆっくりと両腕をまわして抱き寄せる。


何度も唇をついばむ様に角度を変えて繰り返されるキスに、
アタシの体からも力が抜けていく。


「……ねぇ、嵩継……ベッドがいい……」


小さく訴える様に伝えると兄貴はアタシの体をひょいっと抱きかかえて、
兄貴の部屋のベッドへと横たえた。

繰り返し降り注ぐキスと同時に、パジャマの中へと侵入していく兄貴の手が、
アタシの双丘に触れていく。

揉みしだきながら頂きをグリグリと弄ぶ兄貴の手に、
気持ちよくなったアタシは、蜜が溢れ出しているのを感じながら甘い声を発していた。


あっと言う間にパジャマのボタンが外されて双丘から脇腹に触れて通り過ぎると、
アタシの花弁へと兄貴の指先が触れていく。


兄貴の愛撫で蜜が溢れすぎているアタシは、
兄貴の指をすぐに迎え入れて、兄貴を迎え入れる瞬間を待ち望んでいた。







そうやって久しぶりに迎え入れた兄貴を感じながら眠った夜。


朝、目覚めた時、兄貴は隣に居なかった。
別に、こんな夜が珍しいわけじゃない。


抱き合ってる途中に病院からの呼び出しでお預けになったこともあったし、
抱き合ってる途中で、兄貴の寝息が聞こえてきた時もあった。


だから……一つに慣れただけ、幸せなのかもしれない。


ねぇ、兄貴。
何時まで独りで頑張るの?


アタシは何時だって兄貴の家族になれるんだよ。


そんなことを思いながら再び目覚ましのアラームが鳴り響くまで、
アタシは兄貴の布団で微睡み続けた。


翌日、朝風呂を入った後いつものように出勤準備をする。


7時30分くらいに出勤するとアタシたち放射線技師が使う機器の電源を順番にいれて、
異常がないことを確認していった。


全ての機器チェックを終えると今度は申し送りを終えて、
アタシの今日の仕事内容を確認する。


早城の患者と、兄貴の患者入ってるなぁー。


っと患者の名前と主治医の名前を確認した後、
アタシは朝食のサンドウィッチを手にして兄貴のいる医局へと向かった。


医局では兄貴がソファーに足を投げ出して寝ころんでいた。



あぁ、くたびれちゃってさ。

誰かが掛布団をかけてくれたのか、
兄貴はそのまま眠ってた。

暫くその寝顔を見つめていると、ピクリと瞼が動いて兄貴の目が開く。



「氷夢華……」

「おはよう」

「あっ、あぁ……」

「はいっ。朝ご飯。
 時間ある時につまめるように、サンドウィッチにしたから」

「おっ、おぉ」


そう言うと兄貴は体を起こして、
すぐにサンドウィッチを頬張り始めた。


その後、アタシは今日、検査と治療を担当する患者さんのデーターを見ながら、
担当のドクターと軽くミーティングして、自分の部署へと戻った。


いつもと変わらない一日が今日も終わる。


機器を最終確認して、退勤してロッカールームへと戻ると携帯の着信ランプの点滅が視界にとまった。
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