【B】きみのとなり
6.結婚式 後編 -嵩継-
鷹宮の教会に、
いつもは鳴り響くことのない結婚行進曲が鳴り響く。
蓮井が演奏するパイプオルガンの音色が、
空間を包み込んでいく中、氷夢華が親父さんと一緒に一歩ずつオレの方へと近づいてくる。
オレの隣にへと氷夢華が到着すると、
今度は二人並んで、ゆっくりと祭壇の前まで足を踏み出す。
結婚式は、讃美歌の斉唱、聖書の朗読へと厳かに続いていく。
「嵩継さん、あなたは氷夢華さんと結婚し妻としようとしています。
あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、
その教えに従って、夫としての分を果たし、常に妻を愛し、
敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、
死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、あなたの妻に対して堅く節操を守ることを約束しますか?」
神父の言葉に「誓います」と、力強く宣言する。
「氷夢華さん、あなたは嵩継さんと結婚し夫としようとしています。
あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、
その教えに従って、妻としての分を果たし、常に夫を愛し、
敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、
死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、あなたの夫に対して堅く節操を守ることを約束しますか?」
オレに問われた内容そのままにアイツにも問いかける神父。
アイツはベールを被ったまま、チラッとオレの方に視線を向けると、
「はい。誓います」っと言葉を続けた。
その後も、結婚式はお互いの署名を交わすなどの儀式を続けて終わり、
今度はケアセンターの中庭での、ホームパーティーへと舞台は変わっていく。
タキシードのまま、お色直しをした氷夢華を連れて姿を見せた途端、
海斗んちのおばさんは、嬉しそうにオレたちに微笑みかける。
「嵩継さん、今日の料理、海斗さんの考えてたレシピなんですよ。
海斗さんの遺言だったんですよ。
何時、結婚されるかハラハラしてましたけど、
無駄にならなくてよかったです。
本日はおめでとうございます」
そういって、アイツの後輩もオレたちを祝福してくれた。
披露宴の代わりとなるパーティーは、
結婚式に参列してくれた人以外にもケアセンターにボランティアに来てる人、
ケアセンターの患者さんや家族の人たち。
仕事途中に抜け出して、祝いに来てくれた病院のスタッフたち。
入れ替わり、立ち替わり祝福してくれる大勢の声に包まれながら、
オレたちの長い1日は過ぎて行った。
皆が祝福してくれた、この日を……オレは忘れない。
オレの隣で、嬉しそうに微笑み続けるその笑顔を
今以上に守り続けたいと、心の中で強く誓った。