【B】きみのとなり
えっ?
アタシ、何やってる?
アタシは兄貴の家政婦でも世話係でもないっ。
だけど……そんなことをやってるアタシ、
ちょっと今、幸せだった。
おっ、アタシ……やっぱり兄貴の嫁さんの座を勝ち取らなきゃ。
そんな決意を再びしながら部屋を出る。
その後は、部屋に戻って洗面具と一緒にお風呂へ。
ちゃんと私の洗面道具もお風呂場に主張させてお風呂から上がると、
今度は私のドライヤーたちも洗面台に主張させておく。
髪を乾かしてセットし終えると着替えとメイクも済ませる。
そして作った合鍵で兄貴の部屋の鍵を自分でしめると弥英と待ち合わせの近所のパーキングへと急いだ。
あの日から預けっぱなしだった愛車は今日ようやく私の元へと帰ってくる。
途中、コンビニで弥英に手渡す飲み物とデザートを購入して、
待ち合わせ場所に到着すると、すでに到着していた弥英が私に手を振った。
「遅くなってごめん。
それに、車持って来て貰って感謝」
「別にいいよ。
それよりアンタも、大変だったね。
でも今は……ずっと逢いたかった、その人のところに居るんでしょ。
なんか、ちょっと羨ましいわ」
そう言いながらMR-Sから降りると、鍵を私の掌へとのせる。
「あっ、これコンビニの奴だけど食べて。
後、駅まで送るよ」
そう言って運転席に乗り込んで、エンジンをかける車を走らせた。
愛車のエンジンから伝わる振動が心地よい。
弥英を最寄り駅まで送り届けると、鷹宮総合病院とナビに打ち込んで道案内をスタート。
目的地に到着すると、病院内の駐車場に車を止めて玄関を目指す。
何?この病院……教会?公園?
それに……ケアセンターって……。
愛車から降りると駐車場にある看板を視界にとめて絶句。
あぁ、面接何処だっけ?
兄貴のメモ、忘れた……。
けど……多分、面接って言うくらいだから病院の建物の本館目指したらいんだよね。
「よっ、氷夢華来たか」
突然、声が聞こえたと思うとラブラドール犬がチョロチョロと視界に入ってくる。
その後ろからは、車椅子に座って微笑むまだ小さな女の子。
ソイツの車椅子を白衣姿でゆっくりと押す兄貴。
「悪いな。
ユウカちゃん、今日の散歩の付き合いは此処までだな。
ちょっと野暮用があってな」
そう言うと兄貴は車椅子に添えていた手を離す。
「有難う。
嵩継先生、ララ行くよ」
そう言うと、ユウカと呼んでいた女の子は犬と何処かに移動していった。
何だろう……嵩継先生って言ってたから、
兄貴の患者さんとかだって思うんだけどちょっとイラっとしてる。
ムカついたから、
兄貴の足をワザと踏みつけてみる。