【B】きみのとなり
「氷夢華、行ってくる」
声をかけて玄関に出ようとすると、
氷夢華もまた玄関へと駆け出してくる。
「兄貴、下まで送るよ」
そう言って、オレが乗り込んだエレベータへとアイツも乗り込んだ。
地下駐車場まで直結しているエレベータの中には、
すでに先に乗り込んでいるものが存在する。
「おはようございます。
安田先生」
エレベーターの中でオレにかけたのは、
鷹宮の後輩、早城飛翔の甥の神威。
オレが住んでいる、このマンションの経営者だ。
「おはよう、神威。
飛翔は?」
「ホットが入ったみたいで少し前に出掛けました」
「そうか。
悪い、神威……コイツ、オレの知り合いだ。
このマンションに出入りする。
セキュリティ-に報告しといてくれ」
「わかりました」
地下駐車場に到着すると神威は迎えの車に乗り込み、
何処かへ出掛けた。
「何、アイツ?」
「このマンションの経営者だよ」
「ふーん。
嵩兄、車見つけた。シルエイティ-っ」
「あっ、それはプライベート。
仕事はこっち」
飛翔に進められて最近、通勤用に購入したBMWのMクーペを指差す。
早々に開錠して車内に乗り込むと、
エンジンをかけて氷夢華に見送られながら病院へと向かう。
そのままオレはERの応援に入って日勤、当直と鬼のスケジュールをこなした。