【B】きみのとなり
9.すれ違う時間3 -氷夢華-
嵩兄と擦れ違い生活開始から約二ヶ月。
三月も間近に迫った頃、流石に今では病院に行くことにすら嫌になって来たアタシ。
アタシがどんだけ技師としての仕事を身に付けて頑張っても、
評価して欲しい人が評価してくれなきゃ意味ないんだよ。
評価して欲しい人に見て貰えなければ何も進展してないんだよ。
今は手が届くところに嵩兄はいるはずなのに何で距離があるように感じるの?
こんなにも近くにいるのに……。
嵩兄と再会して強引な方法でも嵩兄のマンションに引っ越しして来て、
嵩兄と同じ病院に就職して、これでずっと嵩兄と一緒に居られる嵩兄を二度と失わなくて済むって思ってたのに、
今のままじゃ、あの頃と何も変わんない。
前の病院にいた時と同じ。
埋まらない心を埋める為に峠を無茶苦茶に走って、
時には死ぬことすら怖くなくなるほどに自分を追い込んで攻め抜いて。
それでも満たされなくて今度はカラオケ行って居酒屋の梯子。
何も考えることが出来ないくらいに自分を追い込んで自宅に戻る。
自宅に戻ると同時に布団に倒れこんで、数時間の睡眠の後、また仕事に向かう。
そんな毎日。
食とかへの関心なんて何時からか薄くなってた。
ただ満たされない何かを満たしたくて、それを求め続ける日々。
そんな自分を終わらせたかった。
だから……あの日、嵩兄と再会出来たときは嬉しくて、
こんな自分にピリオドが打てるって思ってた。
なのに嵩兄と再会しても何も変わらない。
ううん、実際には変わってる。
嵩兄を近くに感じながら満たされない想いに、
今まで以上に苦しく追い詰められている自分が居る。
受け入れて欲しい。
見て欲しい。
……なのに……嵩兄にアタシの心は届かない。
嵩兄の心もアタシには……届かない。
もう終わりなのかな。
嵩兄には、本当にアタシなんて必要ないのかな。
あの日から帰ってこない嵩兄。
帰ってこない理由も教えてくれない嵩兄。
ううん、終わりも何も最初から始まってなかったんだよ。
嵩兄への想いを消化しなきゃ、アタシの思いも満たされない。
なのに……嵩兄を諦めることも出来そうにないよ。