【B】きみのとなり
自宅マンションでアルコールを大量に煽りながら、
一人で思考を走らせる。
でも……嵩兄がアタシをいらないなら、
この家も出なきゃいけないかな……。
出なきゃいけない。
必要とされないのに、
この部屋に留まり続けるのは苦しすぎるから。
嵩兄も鷹宮も嫌い。
「あんな病院、辞めてやるっ!!」
大声で自分に言い聞かせるように部屋で怒鳴ると、
フラフラっと自分の部屋に戻り、
便箋と封筒を手にリビングへと戻る。
……兄貴、辞めちゃうぞ……。
早く帰ってこないと退職願書くんだから。
テーブルの上に便箋を数枚重ねて置いてペンを手にしてじっと見つめる。
心の中では嵩兄がアタシを止めてくれるのを念じた。
だけど、どれだけ時間が経過しても嵩兄は帰ってこない。
時計の秒針の音がやけに耳に付く。
冷蔵庫から次のビールを取り出して一気に飲み干す。
そして覚悟を決めて退職願を書き上げる。
嵩兄のバカっ!!
知らないんだから……アタシ消えちゃうぞ。
……消えちゃうんだから……。
*
何時の間にか眠っていたアタシは、
朝、目覚ましの音に目が覚める。
引きずるように体を起すと洗面所で顔を洗って、
お風呂でシャワーを浴びる。
メイクを早々に終わらせると髪をセットして駐車場へと向かう。
鞄には退職願を入れて……今日、退職願を出す。
今日から一ヶ月の我慢なんだから……。、
自分に言い聞かせて着替えを済ませると仕事につく。
とりあえずドクターたちのの医局に顔を出すのが
日課になっているアタシは何時ものように医局へと顔を出す。
今日の検査の予約の確認と打ち合わせの為の日課だけど、
心の中で祈るのは、嵩兄と組む仕事がないことありませんように。
医局に嵩兄がいませんように……。
ずっと逢いたいと焦がれ続けていた嵩兄に会うのが今は怖い。
複雑なアタシの心。
医局に向かう途中、会いたくない奴に遭遇する。
そいつの名前は神島遼真。
アタシの後二、鷹宮に入ってきた精神科医。
別に誰が誰が入ろうが辞めようが、
アタシには関係ないんだけど。
この神島は別の問題がある。
「橘高、此処に居たのか。
仕事だ。
今、ERに運ばれてきた患者のX-Pをとれ」
はぁ、まただよ……。
コイツ、アタシの顔を見たら何時も何か命令口調で指示してくるんだよ。