【B】きみのとなり
おいおいっ。
何てモノ見るんだよ。
オレは……。
『嵩継、こっちにおいで。
お隣の橘高さんの家の氷夢華ちゃんよ。
嵩継とは六歳年下のお嬢さんだけど、ちゃんと可愛がってあげるんだよ』
まだ氷夢華が幼い間にお袋からそう紹介された少女。
それが……氷夢華で……当事は口数が少ない大人しいヤツだった。
何処に行くにもオレの後をちょこまかついて来るヤツで、
血の繋がりなんてないくせに『たか兄、たか兄』って……やべえぇまだ氷夢華の問題も残ってっぞ……オレ……。
ふいに何かが、体にかけられるのに気がついて眠っていたことに気がつき慌てて体を起す。
「嵩継さん、寝てていいですよ。
俺も今日は帰宅しません。
神威にも連絡しました」
そう言ったヤツは飛翔。
「そう言うわけにはいかないだろ。
由貴、キツメの珈琲くれるかっ」
オレが医局のソファーでウトウトしてる間に、
医局には若杉・蓮井・飛翔・氷室の四人が顔を出していた。
誰かがかけてくれた毛布を畳むとオレは、
まだ起ききらない脳を覚醒させるために医局の奥にある洗面室の水道水で顔を洗う。
冷たい水を顔に浴びるたびに少しずつ意識が覚醒していく。
戻って来たときには、
由貴がすでに珈琲をしたくしていて。
それを口にしながら状況を把握する。
「早城、勇人の方は?」
早城は黙って首を横に振る。
「今日は時雨にも手伝って貰いました。
ですが勇の居場所ははっきりしなくて先月の初め頃、勇が入り浸りになっていたバーは見つけたのですが、
そのバーにも先月の中頃からは来なくなったみたいで、それ以降の所在がはっきりしていません」
警察の情報網使ってもその程度かよ。
オレ自身もケアセンターでそいつの母親を預かっているために、
何度も顔を合わせたことがある金城時雨を思い出しながら心の中で毒づく。
「そうか。マジ勇人のヤツも何処に行ってんだかな。
んで千尋が保護したい柳宮の方は?」
「今日、そっちの方は俺が行ってきましたが報告できるものはありません」
若杉が間髪いれずに答える。
「上手くいかねぇな。
蓮井、神島の方はどうだ?」
「どうもこうもありません。
あの人と同じ職場に居たら看護師や技師たちが病気退職間近かも知れないですよ」
「おいおいっ、お前。
んな怖いこと……さらっと言うなや」
「ですが、安田さん俺も思います。
院長も何故あんな奴を代わりに入れたのか」
「それを言うなって飛翔」
それを言うなって……それはオレも散々思ってんだからよ。
「とりあえず若杉と蓮井は自宅帰って寝るか仮眠室で寝て来い。
今の鷹宮には倒れても休ませてやれるほど人材はいない」
「それ言うなら嵩継さんでしょ」
「おいおいっ早城、お前も言うようになったな。
オレもちと裏で休んでくるわ」
珈琲を飲み干してソファーを立ち上がったところに入るホットライン。