【B】きみのとなり



兄貴……アタシ幸せだよ。


兄貴はどれくらいアタシに幸せを
この先もくれるのかな?



お昼頃まで実家でゆっくりと過ごしてアタシと兄貴は
実家を後にした。



帰り道、兄貴は自宅方向ではない方に車を向ける。




「兄貴?」

「悪い……氷夢華ちょっと寄り道してっていいか?」

「うん。
 いいけど……」



そう言って辿り着いた先はお寺。



「兄貴……ここって、もしかして……」

「あぁ。ここにお袋が眠ってる。
 墓参り、暫く来れてねぇからお袋カンカンだと思うわ。

 氷夢華、お前が居たら多少は説教短いだろうから。
 せいぜい相手してやってくれよ」



兄貴はそう言うと、兄貴のお母さんが眠る墓地の方へと
アタシを連れて言ってくれた。


決して大きいとは言えないし豪華とは言えない。



だけどそこには兄貴の想いがいっぱい詰まってる
綺麗な景色が望めるお墓だった。




「あっ。兄貴お墓詣りに行くなら花必要じゃん。
 蝋燭も線香も、何もないじゃん。
 手ぶらだよ」

「あぁ、そうだな。
 いきなり決めちまったから、
 まぁ、お袋だったら許してくれるよ」




っつーか兄貴っ!!!


アタシの気持ちはどうなんだよ。

兄貴はアタシのオトンとオカンに挨拶できたかも知んないけど
アタシはまだなんだよ。



手土産何一つ持たずに兄貴くださいって言えないじゃん。






兄貴は早々にお墓掃除を終えて、
何もセットしてないお墓に向かって先に手を合わしてる。





ったく。




そんな兄貴の隣でアタシも手を合わす。









おばさん、ご無沙汰しています。 

覚えてくれてますか?
氷夢華です。


今日……兄貴がウチの親にアタシのこと『ください』って
挨拶してくれました。

おばさんもアタシに兄貴の事『くれますか?』


兄貴の傍で兄貴と幸せになってもいいですか?


真っ直ぐな兄貴の傍でアタシも幸せになるし、
兄貴も幸せにするし兄貴に家族……プレゼントしたいんです。


兄貴……あの日からずっと一人で頑張ってきてたから。


兄貴のこと幸せにするから。
おばさん、天国から見守っててくださいね。



これからは、仕事が忙しい兄貴の代わりに
アタシがチョクチョク来るから。



……お義母さん……









手を合わせる時間は穏やかで、とても優しかった。





時折、頬に触れる風が小母さんが、
アタシと兄貴の新しい始まりを応援してくれてるみたいで。








幸せになろう。
幸せにするよ。




ずっと守って……守り続けるから。





あの日兄貴と出会えた瞬間から、
アタシと兄貴の奇跡は再び巡りだして、
これからは二人で軌跡を作っていくんだねー。



すかーっと晴れた眩しいくらいの空。
そこにふんわりと浮かぶ真っ白い雲。




空もアタシと兄貴を優しく祝福してくれるみたいで……。



兄貴、幸せだよ。
アタシ。


素直じゃないから……アタシ、兄貴の事いっぱい困らせると思う。
可愛くないから兄貴といっぱい喧嘩もすると思う。



だけど……そんな壁も兄貴と二人だったら、
絶対に乗り越えられるって思えるから。





ずっとずっと夢だった願いが……また一歩叶ってく。


……兄貴……。



ううん。

嵩継……これからもいっぱい喧嘩していっぱい愛して
いっぱいいっぱい楽しいことしていっぱい家族作って。

いっぱいいっぱい幸せになろう。





アタシの大切な人。
その人と一緒にずっとこの先の未来、
歩いていくから……。












The End 




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