【B】きみのとなり
だけど、オレ自身に少し余裕が出てきたからか、
見えなかったものが見えるようになった。
アイツと過ごしている時間は、飽きることがねぇってこと。
二人で過ごす他愛無い時間に、癒されているオレが存在してる。
風呂から上がって、再びソファーへ戻ると氷夢華は消臭剤のスプレーを吹き付けてた。
「おいおいっ、お前。どんだけ、オレが臭いんだよ」
っと苦笑いしながら再びソファーへと座り込むと氷夢華は、
再びグラスに居れたお茶をソファー前のテーブルに置いて、
リビングの入り口に放置されたままになってた鞄をロックオン。
近づいて鞄を持ち上げると問答無用でファスナを開けて、
「クサっ」っとわざとだろっと思うくらいに大袈裟に声を出す。
そうやって言いながらも、当の氷夢華は嫌がってる様子もなく
クスクスと笑いながら洗面所へと向かって洗濯を始めてくれているようだった。
洗濯機のセットを終えたのか再びリビングに戻ってきた氷夢華は、
オレが座るソファーに頭を預ける様に床にぺたりと座り込んで、
上向きにオレを見る。
アイツのTシャツからは、ブラジャーのレースがチラチラとチラつきやがる。
「ねぇ、嵩兄。
今日はずっと一緒に居られる?
晩御飯、何がいい?」
ふと、呟くように問いかける。
「今日は入れるぞ。
少し休憩したら、晩御飯でも買い出しに行くか。
んで買い出しついでに、プリンでも買ってお前も勇人の所、顔出すか?
あれにもきっちり、お前に詫び入れさせないとな」
そんなこともサラリと口にする。
「ったく、仕方ないなー。
仕事の休みはあっても、お兄ちゃんの休みはないもんねー」
なんてアイツは切り返して、むくっと立ち上がるとオレに隣に座って抱き着いてきた。
オレの胸に埋めるアイツの表情は、
ちょっと寂しそうで、それでも今の時間を満喫している嬉しそうな表情も合わさって
一層、愛しさがこみあげてくる。
悪いな。
もう少し、待たせちまうな。
オレ自身が納得できる一人前になれるまで。
そっと、柔らかな氷夢華の髪を撫でた。