【B】きみのとなり
今日は私はオフで、兄貴は昼には4日ぶりに帰ってくるはずだった。
兄貴の予定が記入されたカレンダ-の日付を指先で辿る。
よし、少しダラダラして朝を過ごした私はベッドから起きだして服を着替えると、
クローゼットから掃除機を引っ張り出してマンションの部屋を順番に片づけていく。
そしてお昼前になると冷やし素麵の準備をして、
兄貴用のトッピングの肉も甘辛く炒めて準備する。
先に自分だけ昼食を済ませると、リビングのテレビでワイドショーのファッションチェックを見ながら、
ソファーに座って、洗濯ものを1枚ずつ畳んでは、テーブルの上へと積み上げていた。
全ての洗濯を畳み終えて、それぞれのクローゼットへと片づけると再び、リビングのソファーへと座る。
あぁ、そろそろエアコン入れないとかなー。
窓を開けて作業をしていたものの汗ばんだ体に気が付いて、
慌てて窓を閉めて、エアコンのスイッチを入れる。
涼しい風を感じるように、暫くエアコンの前で立ち尽くして涼んだ後、
後半の掃除機がけを続け始めた。
ふいにカチャリと玄関のドアが開く音が聞こえる。
「あっ、兄貴帰って来たんだ。
お帰り。
昼、冷蔵庫に素麺冷えてるよー。
ちゃんと牛肉甘辛く焼いたやつもあるから、トッピングにして」
掃除機のスイッチを少し弱くして、兄貴に声をかけると、掃除の続きを一気に終わらせた。
掃除機を片づけて、ダイニングに戻った時には、兄貴は冷蔵庫から出して素麺を食べているところだった。
だけど素麺は出てるけどお茶が出てない。
ったく、兄貴お茶くらいちゃんと出しなよ。
慌てて冷蔵庫へと向かうと、コップに麦茶注いで、兄貴の前にことりと置いた。
「おっ、サンキュー。氷夢華」
兄貴はアタシの方を見て告げると、
大きなコップに手を伸ばして、一気にお茶を飲み干すと食器を手にして流しへと向かう。
「兄貴、いいよ食器アタシが洗ってあげる。
それより疲れてそうじゃん?」
兄貴から食器を奪うように、流しへとおいて、洗い桶に水をはって食器を漬け込むと、
そのまま兄貴の背中を押して、ソファーへと座らせた。
洗濯を終えて畳んたばかりのタオルを手にして、
兄貴の肩へとあてると、ゆっくりと肩から揉み始める。
「どう?兄貴?
氷夢華マッサージは?」
「んん?
おっおお、気持ちいいぞー」
そんな会話を切り返しながら、アタシは肩を揉んだり叩いたりを緩急をつけて繰り返す。
こうやって昔も、嵩兄にやってたっけ。
そんな懐かしさも思い出しながら。
気が付くと、兄貴は首をもたげて、少し船をこき始める。
そんな兄貴を背後から抱きしめる様に、体を重ねていく。
ピトっと背後から嵩兄に突っついた途端、
刺激する汗の臭いっ。
『クサっ』
思わず兄貴からはなれて大声で言葉にする。
そんなアタシの声に、驚いたように兄貴は目を覚ました。
「うわぁ、兄貴ないって。
汗臭い」
寝起きの兄貴にキツイ一言をかまして、
そのまま兄貴の部屋へと向かい、さっき片付けたばかりのTシャツを手にして
兄貴の傍へと戻る。