【B】きみのとなり
「悪かったな。氷夢華」
そういってアタシの方に近づいてくる兄貴に慌てて、
その今まで見ていたアルバムを閉じて、机の下へと隠した。
何となく、見ちゃいけない写真を見てしまった気がして。
「帰るか」
アタシの傍まで来て、そう告げると嵩兄はアタシの鞄を持って履きやすいように靴をそろえてくれた。
「すいません。氷夢華さん、嵩継さん有難うございました」
板前服に身を包んだ青年が、調理場から出てきてアタシに会釈した。
「じゃ、ごちそうさまでした」
っと支払いを済ませて、嵩兄は小料理屋を後にする。
「また来ておくれ」っと言う優しい声を受けながら、アタシはマンションへと戻った。
イライラしてただけの時間に比べて、
もっとアタシの胸中は複雑で、女の存在は気になるけど……アタシもも嵩兄と海兄の時間を盗み見したような
罪悪感も重なって、どうしていいかわからず、マンションに帰った後もまっすぐに部屋に閉じこもった。
……ねぇ、海兄。アタシと兄貴、どうなっちゃうの?……
写真にうつる海兄に吐き出してみる。
もやもやした気持ちのまま、ベッドに倒れこんで翌日からいつもと変わらない時間が始まった。
あの女のことは忘れよう。
そうやって思ってたのに、翌週になってアタシの想いは叶わなかった。
鷹宮の病院内で、兄貴の傍で笑うあの女を見かけた。
バカ兄貴っ!!
アタシの気なんて知らないんだから。
怒りに任せるように近くにあった、ゴミ箱にやつあたりした。