【B】きみのとなり
「嵩継さん、お疲れ様です」
「おっ、おぉ。
元気そうじゃねぇか?」
「おかげさまで、順調に回復は出来てるみたいです。
嵩継さんは、ちょっとお疲れ気味ですね。
氷夢華さんと何かありました?」
「何かあったと言えばあった……。ないと言えばないんだが……」
言葉にすることが出来ずに、濁すと勇人は何かを察したようにベッドの上で笑い出した。
「あったんですね。
吐き出しちゃえばどうですか?
今は嵩継さんが、僕のところに来てくれてる一時間ですよ。
一時間は誰も来ませんよ」
そう言うと勇人は手を伸ばして冷蔵庫を開けると、
そのまま飲物を入れて、オレの前へとコップを置いた。
そしてそのまま、オレは……アイツの誘導尋問に引っかかる様に、
氷夢華と時任との一件……、そして時任の言葉にグサリと突き刺さってしまった
おふくろの話とかを吐き出してしまった。
アイツはただ、オレの話を聞き続けてくれた。
おいおいっ……これじゃ、どっちが病人かわかんねぇだろ。
この馬鹿野郎。
「……嵩継さん、駄目ですよ。
ちゃんと話さなきゃ。話すって……本当に大切なことですから」
そういって、アイツは窓の外へと意味ありげに視線を向けた。
あぁ……こいつらの問題もまだ片付いてなかったんだな。
窓の外へと視線を向けた勇人を見ながら、
千尋君と勇人の問題が解決していないことに気が付いた。
言い出せない問題は今も山積みだ。
一時間の特別病室での看病と言う名の休息を経て、
オレは再び現場へと踏み出した。