【B】きみのとなり
3.兄貴 -氷夢華-
『嵩兄~海兄~氷夢華を置いてかないで!!』
叫び声と同時に飛び起きたアタシは見知らぬ部屋で気がついた。
あれーっ、此処何処だよ。
ッたく……暖かい羽毛布団からゴソゴソと這い出してフローリングの床を素足で歩く。
床はご丁寧に床暖房仕様なのかぽかぽかと気持ちいい。
だけどマジっ、此処何処?
見知らぬ部屋の扉を次々と開けながら前進していく。
閑散とした殺風景な部屋に申し訳程度に必要最小限整えられた家具。
昨日アタシ、嵩兄を見つけたんだっ。
安田嵩継【やすだ たかつぐ】。
アタシの隣の家に住んでた兄貴。
んでもって、アタシがずっと追い求めたヤツ。
オトンに言わせれば『氷夢華は 嵩継の嫁になるが口癖だったぞ』らしいけど、
そんなこと今更持ち出されてもねぇ。
けどオトンには、そんなこと言いながらアタシ的には満更でもないらしく嵩兄一筋。
他の男にゃ見向きもしない……って言うか……ろくでなしばっかに見えて興味なし。
嵩兄が消えた後も嵩兄を見つけたくて嵩兄が入学したと聞かされた医大系列の大学に必死で勉強して入るわ、
なんやで結構頑張っちゃってさ。
そんな兄貴と昨日……再会したんだ。
んで兄貴に抱きとめられて泣いちゃった……と。
だけど……マジ此処、何処だろ。
嵩兄を見つけたってことは有力なのは嵩兄の家なんだけどな。