【B】きみのとなり

11.峠-嵩継-



時任さんが旅立って時任には慌ただしい時間が過ぎた。
葬儀屋を手配して見送りを終えたのは明け方近くだった。



「嵩継君、スタッフの皆様、父がお世話になりました」



時任はそういって静かに一礼すると、
時任さんのご遺体と共にケアセンターを後にした。



「安田先生、お疲れさまでした」

「あぁ、お疲れさまでした。
 また何かあったら声かけてください。

 オレ、とりあえず本館の仮眠室で寝てきます」

「はいっ」



ケアセンター配属の看護師に伝えると、
そのままオレは仮眠室へと直行した。


一気に重怠く疲労度が増した体で仮眠室のドアを開けると、
そこには先客は居ない。

一番身近なベッドへと転がり込むとカーテンを閉めて体を横たえた。


無意識に掴むのは、海斗のエターナルペンダント。



それを握りしめながら、オレは意識を引きずられるようにして
眠りの中へと落ちて行った。



一時間くらいで起きるはずが気が付いた時には七時をまわっていて、
オレは慌てて医局へと飛び出した。



「あっ、おはようございます。
 多少は眠れましたか?

 久しぶりに嵩継さんが仮眠してるの見かけたんで、
 そっとしときました。

 疲れ溜まってるんじゃないですか?」



そういってオレがソファーに座った途端にコーヒーと手作りの焼き菓子を差し出してくるのは若杉だ。

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