【B】きみのとなり




「悪かったな。
 勇人にも、お前さんにも、心配かけたみたいで。

 恋愛って難しいなー」




そう恋愛って難しい。
恋と愛の境目って何だろうな。



オレの心の中には気が付いたら氷夢華が居て、
いつも一緒にいることが当たり前になってた。



それは恋じゃなくて、愛だったのかも知れない。
不器用なりに、オレはいつもアイツだけを見て愛してきたつもりだ。



だけど……アイツは、それだけじゃ満足しなかった。
オレの想いは伝わらなかった。




オレたちは、恋をすることを忘れたのか?






どれだけ答えを出そうとしても、納得のいく答えなんて見つからない。




だけど……今、はっきり思えるのは、
オレにはアイツがやっぱり必要で、アイツじゃなきゃ嫌だと言う事。






その直後、見なれた赤い車がF峠の頂上へと姿を見せる。






「嵩継さん、よかったですね。
 俺はもう少し流して帰りますから」


アイツの車を見た途端、飛翔は飲み終えた缶をゴミ箱へと放り込んで、
相棒の運転席へと乗り込むと、エンジンをふかして車を発進させた。



飛翔の相棒が止まっていた場所へと、
氷夢華が車を駐車する。


エンジンを止めた途端、運転席のドアを勢いよくあけた氷夢華は、
人目もはばからず、オレの胸に飛び込んできた。




「兄貴……ごめん……アタシ……」



そういって抱き着いてくるアイツを、
安心したようにそっと手を回して抱き寄せた。




嵩継……そうやって、
名前で呼ばれたときはびっくりしたけど……
なんか何時ものお前じゃなくて不安になる。




「悪かったな。氷夢華」

「うん……。バカ兄貴っ」





小さく呟いたアイツの言葉をかみしめながら、
オレはアイツの体温を強く感じていた。









< 96 / 149 >

この作品をシェア

pagetop