【B】きみのとなり




暫く口づけを重ね続けたアタシたちは離れた途端に何だか照れくさくなって、
ちょっとよそよそしくなる。



「悪い……。
 お前がキスなんてしてくるから歯止めが利かなくなっちまった」



えっ、兄貴?
歯止めがきかないって何?


兄貴がアタシがどれだけモーションかけても何もしてこなかったのは、
アタシが魅力がないからじゃないの?


今のアタシは兄貴の理性を奪えるくらいにいい女になったってこと?



「兄貴……」

「氷夢華、オレなんかと一緒に居ていいのか?」


いい気持ちになってたのに、ふいに兄貴のその言葉で雲行きが変わる。



「えっ?」

「ほらっ、今日お前出掛けてただろう。
 病院前に男が迎えに来てた」



そうやってそっぽむいた兄貴の仕草がなんだか、可愛らしくて愛しく思えた。



兄貴ごめん。
見られてたんだね。

んで……兄貴も、やきもちやいてくれたんだ。

アタシが、ずっとあの女と兄貴の姿を見て、やきもち焼いてたみたいにさ。



「出掛けてたけど断ってきたよ。
 だって、アタシにはやっぱり……あっ、嵩継が一番だから。

 ちゃんとそうわかったから」


思わず、兄貴って言いそうになって名前に言い返す。



兄貴のこと、ちゃんと名前で呼ぶって決めた。

兄貴の名前を呼び捨てにする数少ない一人にちゃんとなって兄貴に家族をあげるって思ったはずなのに、
やっぱり油断すると、長年呼びなれた兄貴とか嵩兄の呼び方に落ち着いてしまいそうで……。



「……氷夢華……」


兄貴はアタシの名をつぶやくと、次の瞬間再び抱きしめられて、
兄貴に力強く抱きしめられて深い深いキスをしてくれた。

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