【完】さらば憧れのブルー
街灯が少ない住宅地の狭い路地に入り込み、少し開けた土地に私と雄兄が住む家がある。
土地自体は野球ができるくらい広いのだが、その大半は広葉樹が広がる林になっている。
ちょっぴり小高いところにある家に続く道は砂利が敷かれているだけで、特に舗装されていない。
研究職についている兄が、家で静かに研究をしたいということで、昨年この家に引っ越してきた。
車を家の前に停めて、雄兄が車から降りる前に雄兄の写真を撮った。
車から降りながら雄兄が、「それにしても、どうしてインスタントカメラなの?デジタルカメラの方がたくさん撮れるし、いいんじゃない?」と聞いてきた。
「すぐ、形に残るからいいんだよ」
私は、インスタントカメラから出てきたフィルムを取り出しながら、雄兄が開けてくれた玄関の扉を通った。
「写真……持ってこれなかったでしょ?だから、たくさん残しておきたくて」
雄兄は、私の言葉を聞くと困ったように微笑みながら、「そうだね」と言ってリビングに入り、対面キッチンで夕ご飯の支度をし始めた。
リビングのソファーに座り、フィルムをじっと見つめていると、少しずつ雄兄の顔が浮かび上がってきて、1分くらいすると、そのフィルムに綺麗に色がついた。