【完】さらば憧れのブルー
菜子の家を出ると、一紀が待っていた。
一紀の荷物は、ちっちゃいリュック一つだけで、私たちは本当に驚いた。
「男の荷物は、こんなもんだ。てかお前らが荷物多すぎなんじゃないの?」と一紀が偉そうに言うので、私たちも「女の荷物は、こんなもんなんだよっ」と言い返してやった。
そんな様子を見て、菜子のお母さんが、「車で送って行こうか?」と言ったけれども、私たちは断った。
だってここで学校に送られたら私たちがずる休みをしていることがばれてしまう。
とりあえず必死で歩いて近くの駅まで行って、高速バスが出ている場所まで電車で移動した。
高速バスが走り出すまで、途中でばれるんじゃないかとハラハラしながら顔が見えないように不自然に隠れたり帽子をわざと目深にかぶったりした。
無事に高速バスが出発した時には、三人一緒にほうっと息をついた。
私が『彩智』だったころに住んでいた夜光虫の見える海がある町までは、高速バスで一本。
観光地になっている場所なので、迷うことなく到着することができる。
ゴールデンウイークの時は一般道路を通っていったので、景色を楽しむことができたが、高速バスは、高速道路を走ったから景色を楽しむことはできなくて、気づいたら菜子と一紀は私の両隣でぐっすり眠っていた。
バスの一番後ろの席から乗っている人を観察していると、家族連れや恋人たち、おじいちゃんおばあさんの団体など様々な人たちが乗っていた。