【完】さらば憧れのブルー
今まで経済的にも精神的にも支えてくれた雄太郎さん。そんな雄太郎さんの気持ちに答えたくて、私はこれまで懸命に勉強した。
雄太郎さんがアドバイスした通りにバイトも一度休んだ。
記憶を取り戻してからは、ただただ、雄太郎さんに安心してもらえるような『優花』になるんだと懸命だった。
それは、過去の『彩智』もひっくるめて、新しい自分になるのだという決意のようなものでもあった。
あの時のことをなかったことにしてしまっていたとしたら、ここまで頑張れなかっただろうし、いつまでも雄太郎さんに甘えっぱなしだったと思う。
*
自分を見下ろすかのように少し高い場所に置かれた合格者の番号が載せられた掲示板から、自分の受検表の番号を探す。
「……あった……」
周りの悲鳴にも似た歓声に、自分の高まっている鼓動がかき消されることなく脈打っているのが分かる。
涙が落ちそうになるのを堪えて空を見上げたとき私の腕が誰かに掴まれた。
振り向いた先にいたのは、私と同じく涙目になっていた一紀だった。
「あった?」
「うん。あった」
「よっしゃーっ」
その腕を一紀に引き寄せられるように引っ張られた私は、一紀の胸に勢いよく突っ込んだ。
思いっきり引っ張られたから鼻が一紀の胸に力強く当たって痛かった。
その痛みの涙と混じった涙が一気に目から零れ落ちた。