【完】さらば憧れのブルー

車に乗り込むなり、「これ持ってくれる?」と言って、紙袋の方を私に渡すと、小さなトートバックは後ろの座席にぽんと投げ入れた。
 


「その紙袋、斜めにしないようにしておいて。その中に、今日の晩御飯のおかず入れてきたから」
 


紙袋を通して、ほかほかと暖かい空気が私の手のひらに伝わってきた。

そっと中を覗くと、色々な大きさのタッパーが3種類入っていた。
 


「茄子の揚げ出しと、ポテトサラダと、鶏肉焼いたのあったから、ちょっともらってきた」
 


「嬉しいです!ありがとうございます!」
 


「あの二人はゲームで夢中だから、適当なのコンビニで買ってさ、それは二人でこっそり食べちゃおうよ」
 


美由紀さんは、ちょっぴりいじわるそうに笑いながら、車を発進させた。
 
次に車を停めたのは、コンビニ。
 
美由紀さんは、プリンターで印刷したいものがあるらしく、私に「二人のご飯を買っておいて」と言って、自分の財布を私にそのまま渡すとコピー機にUSBを差して、プリンターを操作し始めた。


二人のご飯を選び終えて車に戻ると、美由紀さんは、さっき印刷したであろう写真を眺めて、「これが一番きれいかな」と言って、何枚かあるうちの一枚を私渡した。
 


「きれい……ここどこですか?」
 

その写真に映っていたのは、夜の海に映った青い光だった。

その青い光はまるで天の川のように帯になっていて、ずっと遠くまで続いている。
 


「これ見て……何も感じない?」



美由紀さんがちょっと切れ長の目を大きく開きながら私をじっと見つめてきた。

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