【完】さらば憧れのブルー
お風呂からあがったであろう高森君が、上半身裸でタオルを一枚下半身に巻いたままリビングに入ってきたのだ。
「こらっ!あんた、人様の家で失礼な!」
美由紀さんが高森君の傍に駆け寄ると、私に見えないように高森君の姿を隠してくれた。
「ごめん。もう帰ってるなんて思わなくてさ」
高森君は、私の姿を見つけると、両手で上半身を隠しながらリビングの扉の陰に隠れた。
「これ着替え。雄太郎の部屋で着がえてきなさい」
美由紀さんは、着替えの入ったトートバックを高森君に渡すと、高森君の背中を押して、二階に追いやった。
「ごめんね、優花ちゃん。本当おバカな弟でさ」
「ちょっとびっくりしました」
「……一紀君、何気に筋肉あるよね」
雄兄ちゃんが、引いた豆をペーパーフィルターに入れてお湯をそそぎながら変なことを言うので、ぎょっとして目を見開いてしまった。
「雄太郎……あんたそういう趣味あったっけ?」
「趣味っていうか、俺筋肉つきにくいからさ、筋肉ある人羨ましくて。いざって時に頼りになる感じしない?」
「まあ、ひょろっとしている雄太郎よりはね」
「でしょ?……ねえ、一紀君も夜光虫見に行くときに連れてってもいい?優花になんかあったら大変だし」
「へ!?私になんかあったらって……そんな危険なところにいくわけじゃないでしょ?」
「いや……」
そう言って雄兄は美由紀さんを見ると、二人でアイコンタクトをして、お互い小さくコクンと頷いた。