【完】さらば憧れのブルー
「そういえば、そろそろだよね?みんなで出かけるの?」
黙って歩いてくれている高森君に私から話しかけたら、高森君は待っていたかのように落ち着いた声で「うん、そうだね」と答えた。
「青い海楽しみだよね。というか青じゃなくても海ってだけでテンション上がる」
「そうだよね」
私たちが住んでいるのは、内陸部の方で、近くの海と言ったら車で二時間くらいかかってしまう。
「もう色々準備してる?」
「うん。たくさん写真撮りそうだからインスタントカメラのフィルム、いっぱい買ったよ」
「それは大事」
「でしょ?高森君は?」
「俺?俺は当日着の身着のままで行くよ。姉ちゃんは服とか水着とか色々買い込んでたみたいだけど」
「雄兄は、そういうところ気にしないのにね」
「うーん。可愛く見られたいんじゃない?姉ちゃんお兄さんのこと相当好きだからな」
「……そうだよね。私も好きな人出来たらそう思うのかな?」
「好きな人いるの?」
「出来たらって言ったじゃん」
「あ……そっか。ちょっと焦った……」
高森君の言葉に、私もちょっぴりだけ焦る。
……高森君は、こういうところ本当に素直だ……。
バイト先に着いて、私に通学バックを渡し、「じゃあな」と言って手を振って歩きだした高森君の背中を見つめながら、心臓がりょっぴりだけ高鳴っているのを感じた。
私の雄兄に対する気持ちは、やっぱりただのブラコンだったなって思える日まで、そう遠くなさそうだ……。