【完】さらば憧れのブルー
「とりあえず、そこの大学も夏休みにオープンキャンパスあるし、行ってみようよ」
高森君の誘いに、「それもいいかもね」と素直に頷けた。
菜子がそんな私と高森君の仲を見て焼いたのか、私の腕に自分の腕を巻き付けて、「私も行く!」と、ちょっぴり唇を尖らせて拗ねたような表情をしながら高森君を睨み付けた。
そんな私たちを見ながら美由紀さんが、「いいね、青春だね」と言った後、雄兄に「なんだか懐かしいね」と呟いた。
「姉ちゃんとお兄さんは、同じ大学の出身なんですよね?どうやって出会ったんですか?」
高森君の質問に、雄兄は「うん……」と、何かを考えているように目線をちょっとだけ上にそらしてすぐに戻すと、「共同研究することになって……それが出会うきっかけだったよ」と答えた。
「共同研究って?」
「お互いの専門的な考えや研究を持ち寄って、それを関係づけさせて証明していくって感じかな?」
「ふうん、なんだか難しそう」
「一紀君にはそうかもしれないね。ほら、俺らが勉強してるのって特殊だから。でも俺と美由紀にとっては、毎日が新しい発見って感じで、ゼミの部屋で相当な時間を一緒に過ごしたよね。話がつきなくてさ」
「へえ。どんな研究してたんですか?」
「……簡単に言うと、記憶と心理の関係についてだよ」
「やっぱり難しそうだからこの辺りにしときます」
高森君はそう言って、ぼすんと背もたれに寄りかかると、「早起きして眠いから寝る。着いたら起こして」と言って、被っていたキャップを深くまでかけると、腕を組んで眠ってしまった。