【完】さらば憧れのブルー

もっと突っ込んで聞いて欲しかったのにと思った……だって、美由紀さんが心理の専攻だっていうのは分かっているから、記憶の専門知識を持っていたのは雄兄ということになる。

そんなこと一度も聞いたことなかった。

ただ単に薬の研究をしているのかと思ったから……。
 


「雄兄の開発している薬って、記憶に関係する薬なの?」
 


「……そうだね。あんまり優花に気にして欲しくなくて言ってなかったけど」
 


「……その薬で……記憶を戻せるっていうことは出来ないの?」
 


「今の段階だとね」
 


「……」
 


私が黙っていたら、美由紀さんが「優花ちゃんは、今幸せ?」と聞いてきた。
 


「幸せ?……毎日楽しいなとは思いますよ……あ、でも雄兄のご飯食べてるときは幸せです」
 


「なるほど。それなら良かった」
 


美由紀さんはそう言って雄兄の肩をとんとんと叩きながら「やるじゃん」と雄兄を褒めた。
 

美由紀さんが言いたいのはきっと……『今が良ければいいじゃない』ってことなんだと思う。

でも、それでも私は、自分の記憶を取り戻したいと思っている。

小さい頃の雄兄との記憶とか、何か夢に見た職業はあったのだろうかとか、父母との思い出とか……。
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