【完】さらば憧れのブルー
「あ、俺は青い海ってのがどのあたりで見られるのかこの辺り現地調査に行きたい!」
高森君がはいっと手を挙げて勢いよく答えたので、私も菜子の手をとって手を挙げると、「私たちも」と即答で答えた。
「じゃあ、チェックイン済ませたら別行動ね。スマホは必ず持っていくように」
雄兄はそう言った後高森君に「暗くなる前には戻ってきてね」と言って、自分のスマホの番号を高森君に教えていた。
チェックインが済み、高森君と菜子と私は、現地調査と名のついた暇つぶしの散歩を始めた。
ホテルの近くには、大きな国道が走っているせいか、ちっちゃな水族館とか地元の食べ物が売っている道の駅とか、海産物を多く取り扱っている食堂があった。
海水浴場には、まだ海には入れないもののバーベキューをしている人たちの姿がたくさんあった。
「知らないところ歩くのって、なんだかどきどきするよな」
高森君は、まるでちっちゃな子どもみたいに辺りをきょろきょろ見回しながら歩いている。
一方の菜子は、知らない場所っていうのが苦手なのか、眉毛を下げながら不安そうな顔で歩いている。
両極端な二人を見ている一方で私は、この二人のツーショットを撮るのもいいかもなと、カメラで撮影する題材を考えていた。
記憶がないからこそ、こういう日常を残しておきたいと思う。
せめて、何か過去のものが残ってさえすれば、私と言う存在がどんなものなのかが分かるだろうに……。