【完】さらば憧れのブルー
「あ。イカ焼き売ってる」
高森君が浜辺の近くの小さな海の家で売られているイカ焼きを見て近づいた。
香ばしい醤油の香りが漂って、お昼も近く空腹だった私のお腹はぐうと音を立ててなった。
「いらっしゃい」
店前で頭にタオルを巻いた若いお兄さんが、バーベキューコンロで手のひらよりも大きなイカを焼いていた。
火が通ってくるんとなったイカの頭を軍手で軽く押さえて、トングで足を持つと、手早く頭と足を離して近くに置いてあったテーブルの上に置かれたまな板の上で、包丁で細長く切りそろえてフードパックに入れた。
手早い作業に私も高森君も菜子も「おお」と声で感動を表し、その姿に見惚れていた。
五百円で一パック買い、浜辺に隣接する幅広い5段くらいしかない階段に並んで座ってみんなで食べた。
イカと一緒に添えられたマヨネーズには一味唐辛子が添えられていて、ちょんとつけて食べると醤油の香ばしさと混じってものすごく美味しかった。
「イカ、うまっ」
高森君はそう言って、私たちに遠慮することなくパクパク口に放り込んだ。
「食べるの早いって。こんなことならもう一つ買えば良かった」
「まだいろいろ美味しそうなものあるし、腹に余力持たせといた方がいいんじゃない?」
「都合いいなあ……」
菜子がいった言葉にぽんぽんと返してくる高森君を見て私が、「二人の会話って漫才みたいだよね」と言ったら、「そんなことない」と二人同時に言ったので、これまた面白くて笑ってしまった。