【完】さらば憧れのブルー
「あのさ、高森君の番号教えてよ。私こういうの得意だからさ、私が登録していい?」
「ごめん!慣れてなくて……なんか……武田さんってお姉さんって感じだよね?」
「え?なんで?」
私がスマホから目を離して高森君を見上げると、高森君と目が合った。
高森君は、気まずそうに、「あ……いや……」と言って目を逸らしたけれど、照れ臭そうにもう一度私を見た。
「さっきカラオケで騒いでた時も、みんなを見守ってる感じしたっていうか、飲み物とかもさりげなく注文してくれたし、すげえなと思って」
「そうでもないよ?家では、お兄ちゃんに頼りっぱなしだし」
「お兄ちゃんいるんだ」
「うん。あ、登録できた。じゃあ、私これからバイトだから」
私はそう言って高森君に手を振ると、高森君も手を振り返した。
「お姉さんか……」
バイトに向かう道を歩きながら、家にいる雄兄が私にしてくれていることを想像した。
雄兄は、私のことをとても大切にしてくれる。
飲み物をさりげなく頼んでたって高森君は言っていたけれど、それは絶対に雄兄の影響だ。
雄兄は、私に対しても誰に対してもそうだけれど、レディーファーストだ。
相手がこんなことされたら嬉しいだろうなということを、ストライクでしてくれる。
彼女の美由紀さんは、絶対に……絶対に幸せものだと思う。
バイト先に飾られている写真を見ながら、ちょっぴりだけ胸が痛む。
こうして……いつか雄兄と美由紀さんも結婚して、子どもが生まれたら家族写真を撮るのだろうか。
私はその頃、雄兄の傍にいるのだろうか……それとも……。