【完】さらば憧れのブルー
菜子と恋バナをして楽しんでいたら、砂浜の方でビーチバレーをしている同年代くらいの男の子の一人が、じっと私の方を見ていることに気づいた。
気のせいかと思い、視線を逸らせてもう一度その男の子を見たら、やっぱりまた視線が合った。
じっと見ていたら、その男の子の顔面に相手チームがアタックしたビーチボールが思いっきり当たって、同じチームの男の子や女の子達にかなりいじられていた。
その様子がちょっぴりだけ面白くて、くすっと笑っていたら、高森君の声が聞こえた。
「ただいま!ほら!さっきブーブー言われたからイカ焼きも買って来たぞ」
高森君はそう言ってビニール袋の中からイカ焼きと、お茶やジュースを出してとんとんと並べた。
「優花が言った通り、やっぱり優しいね」
「え!?武田が?」
「そうそう。私、食べる前にちょっとトイレに行ってくるね」
菜子はおしりについた砂を軽くぽんぽんと払うと、階段の後ろにあったトイレへ行ってしまった。
菜子の言葉に明らかに機嫌を良くした高森君が、鼻歌を歌いながら、「お茶とジュースどっちにする?」と聞いてきた。
「お茶にする」
「オッケー」
高森君は、ご丁寧にお茶の缶のプルタブを開けて私に「はい」と手渡してくれた。
「俺、優しい?」
「そういうのは……自分で言うもんじゃないんだよ」
「そうだけど」
高森君は、ジュースの缶のプルタブを開けると、そのままグビグビっと一気に飲み干してしまうんじゃないかという勢いで飲んだ。