【完】さらば憧れのブルー
「あら?優花ちゃん、今日はずいぶん早いのね」
私がぼんやり写真を見ていると、子ども写真館【スタジオふわり】の店長の小嶋さんが店の自動ドアから出てきた。
「今日、入学式で学校早く終わったので……あれ?小嶋さん、髪かわいい。ゆるっとパーマがかかって髪色も明るい。超似合ってますよ!」
「そう?ありがとう。春だし、ちょっぴり思いきっちゃった」
「いいなあ……私も染めたいなあ」
「南高は、校則厳しいし無理でしょ?」
「まあ、そうなんですけど……」
「優花ちゃんは、そのロングの黒髪が素敵なんだからさ、そのままでいいと思うな。背も高めだし羨ましいよ」
小嶋さんは、そう言って私の背中の方へ回り込むと「ごめん、早速なんだけどさ、今日入学式もあってか急なお客さんが多いのよ。手伝って」と言って、お店の方へとぐいぐいと背中を押した。
「任せてください。遅くなるようなら兄に連絡しておきますけど……」
「あ、その方がいいかも。前だまって優花ちゃんを残業させたとき、ちょっぴりお兄さんに怒られちゃったし」
「え!?そうなんですか!?」
「そう。お兄さん、優花ちゃんのこと本当大好きだよね」
そんな雄(ゆう)兄の話を聞いて、私の胸はきゅんと音を立てて縮んだ。
それと同時に罪悪感も一緒に生まれた。
ここ最近……私の雄兄に対する気持ちがどんどん大きくなっている気がする。
これは、ブラコンの域を超えているのではないかと悩むこともある。
そんな複雑な思いを抱えながら、雄兄に電話をかけた。