【完】さらば憧れのブルー
雄兄は、スマホをいつも手元に置いていてくれていて、必ず電話をかけると出てくれる。
今日は2コールという速さで私の電話に出た。
「もしもし雄兄、優花だけど。今電話しても大丈夫?」
『うん、いいよ。どうした?』
雄兄のけだるさと柔らかさが一緒に交じっているような、安心する声が電話の向こうから聞こえた。
「あのね、今日バイトが少し遅くなるかもしれないの」
『そうなんだ。じゃあ迎えに行く』
「ありがとう!たぶん8時30分くらいには終わると思う」
『分かった。そのくらいに。店の外に車止めて待ってる』
「うん。それじゃあ」
電話を切り、スタッフルームの中でエプロンを身に着けていると、小嶋さんがノックをして入ってきて、「お兄さんには連絡ついたみたいだね」とにっこり微笑んだ。
「はい。迎えに来てくれるそうです」
「だと思った。優花ちゃん、顔がにやけてるもん。本当仲がいい兄妹で羨ましい」
小嶋さんが言ってくれた言葉にほっとした。
そうだよね……別にこうやって喜ぶのは、変なことじゃないんだよね。