【完】さらば憧れのブルー
✽4✽
目を開けると、真っ白い天井が見えた。
「優花?」
聞き覚えがある声が聞こえて、ぼんやりとした意識の中声がした方へ顔を向けると、そこにいたのは、目に涙を溜めた雄兄だった。
その涙が頬を伝い落ちていく。
「もう、目開けないかと思った……」
雄兄はそう言って、私の頬にそっと手を当てると、はあっと震えるような息を地面に落とした。
雄兄は、ベッドについていたナースコールのボタンを押すと、「目が覚めました。お願いします」と言っていた。
布団の上に出された自分の手に違和感を感じて見てみると、点滴の針が刺さっていた。
ここは、病院……か……。
病室に来たお医者さんと雄兄の会話を聞いていて分かったことは、どうやら私は、3日間眠り続けていたらしい。
最後の記憶は一紀から逃げて砂浜にいたときだから、あの後、眠ってしまったのだろうか。
お医者さんが部屋から出ていて、病室は、私と雄兄の二人だけになった。
雄兄は、部屋の中にある洗面台でタオルを濡らして、私の顔を拭いてくれた。
その優しさが心苦しかったけれど、起きたばかりの私は体がだるくて抵抗することが出来なかった。
「俺にこんなことされるのは嫌だろうけど……」
雄兄は、私の思っていることが分かっていたのだろう。
そんなことを言いながら申し訳なさそうな声を出した。
私はそんな雄兄を直視することができずに、ずっと視線を天井の方へ向けていた。