【完】さらば憧れのブルー
撮影がひと段落して、現像し終わった写真をアルバムに入れる作業をスタッフルームで行っていると、小嶋さんの娘さんの真由(まゆ)ちゃんが、二階の自宅から降りてきて作業を手伝ってくれた。
真由ちゃんは中学生。
たまにこうして下に降りてきては、たわいもない話をしたり、宿題を教えたり、まるで自分の妹のようにかわいがっている子だ。
「今日は、宿題は大丈夫なの?」
「うん。今日の宿題は自学と、得意な数学のプリントだったから自力でいけたよ」
「今年受験だけど、行く高校はもう決めた?」
「真由は、優花ちゃんと同じ高校行くつもりだよ。偏差値高いから相当勉強しなきゃダメだって言われたけどね。」
真由ちゃんは、白い手袋をはめた手で、丁寧に写真の小さな埃をとって、私に「はい」と言って渡してくれた。
「真由ちゃんなら大丈夫だよ、コツコツ頑張ってるみたいだし。お兄ちゃんが言ってたんだけどね、少しずつでもいいから、毎日机に向かう習慣つけとけばいいんだって」
私は、真由ちゃんからうけとった写真を、曲がらないように慎重にアルバムにくっつけた。
「そうなんだ。いいなあ、優花ちゃんは。お兄ちゃん、すっごい頭いいんでしょう?ちっちゃい頃から、頭良かったの?」
「ちっちゃい頃!?あ……うーん、どうだろう……。気づいたら頭良かったかな」
「ふうん。天才的な感じかな?」
「まあ、そんなとこ……」
その時、スマホに着信が入った。
画面を見たら【雄兄】と表示されていた。
集中して気づかなかったけれど、もう8時30分を過ぎていた。