【完】さらば憧れのブルー
「真由ちゃん、これ途中までしか写真入れてないんだけど、あとお願いしていい?お兄ちゃん迎えにきちゃった」
「うん。いいよ!お母さんには言っておくから」
「ありがとね。それじゃあ」
私は付けていたエプロンを急いでロッカーの中にあるハンガーにかけると、通学バックを取り出し、飛び出すようにお店を出た。
鳴ったままのスマホを片手に、店の前に停めてある雄兄の車の窓ガラスをコンコンと叩いた。
私の窓ガラスの叩く音で、私がいることに気づいた雄兄は、スマホの光で照らし出された顔をこちらに向けて、にっこりと微笑みながら車の助手席の鍵を開けてくれた。
「お疲れ。はい、どうぞ」
助手席に座るなり、雄兄は私の膝の上に花柄の小さな箱を置いた。
「なにこれ?」
「開けてみてからのお楽しみ」
雄兄はそう言って、車のギアを入れなおして車を発進させた。
片手でハンドルを握る雄兄の顔は、いつにもなくにこにことしていた。
箱を開けてみると、そこには私が前から欲しかったインスタントカメラが入っていた。