【完】さらば憧れのブルー




その日。

久しぶりにバイト先の子ども写真館【スタジオふわり】へ行った。

お店に入るなり、店長の小嶋さんが「優花ちゃん、久しぶり。どうだった?旅行は楽しかった?」と、カウンターらら出てきて迎え入れてくれた。



「楽しかったです。すみません、長い間お休みしていて」
 


「いいのいいの。気にしないで。早撮りの七五三のお客さんがゴールデンウイークに入った関係で、検品すごく多いんだけど、しばらく残業しても大丈夫?」
 


「構いませんよ!むしろ入れてもらった方が助かります!」
 


「そうなの?」
 


「はい!」
 


「助かるわ。じゃあ休んだ分ガツガツ働いてもらうから。覚悟してね」
 


小嶋さんは、そう言ってバックヤードへと向かうと、検品の写真をバックヤードの中にあるテーブルにどっさりと広げた。
 


可愛らしいピンク色の着物を着た女の子の写真がふと目に入った。

私にもこんな時があったのかなと思った。
 


写真の検品の前に、いつも通り雄太郎さんに遅くなることの連絡を入れた。

雄太郎さんから返信があり、いつも通り迎えに来てくれることになった。

バイトを続けること自体反対の雄太郎さんのことだから、遅くなることを伝えたら何か言われるのかなと思ったけれど、思いのほかあっさりと「分かった」だけの返信だった。

< 90 / 163 >

この作品をシェア

pagetop