【完】さらば憧れのブルー

「お兄さん、オッケーって?」
 


小嶋さんが私の隣に座り、写真を確認しながら白手袋をはめた手で優しくなぞってほこりをとった。
 


「はい。いつも通り、迎えに来てくれるそうです」
 


「あいかわらず、優しいお兄さんね」
 


「……そうですね」
 


私は、その言葉を聞いてうまく笑えなくて、ため息交じりの小さな声で小嶋さんに答えた。
 
小嶋さんから写真を受け取って、写真の四隅に両面テープを貼っていると小嶋さんが、「お兄さんと何かあった?」と心配そうに聞いてきた。
 


「……喧嘩してしまって」
 


「そうなんだ」
 


「はい。はじめての喧嘩で、少しくらい気まずくなるかなと思ったのですが、兄が何も変わらないのがなんだか、こう……不思議?というか、腹が立つというか……複雑な気分なんです」
 


「はじめての喧嘩?それもまたすごいわね」
 


そりゃそうか。

小嶋さんにとっては、私たちは17年以上も一緒に育った兄妹なんだし、『はじめて』っていうのは、珍しいことだよね。

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