はじまりはミステイク



よかった。


また、笑ってくれた。


藤山の勝利を喜ぶとともに、圭吾くんの笑顔が再び見れたことに心が躍った。






「いやー、いい試合だった」


試合が終わり、帰り支度をしながら圭吾くんが呟く。


藤山は個人戦で勝ち上がって、惜しくも準決勝まで届かなかったものの、ベスト8らしい好成績をおさめたのだ。


「藤山ってすごいね」


「前、天木が帰った時はここまで勝てなかったけどな?久々に見たよ、あの絶不調」


う、あの途中で帰った日の試合のことですね。


「あのことは忘れてっ」


そう言いながら、体育館の出口へ向かう。


「なぁ、天木はこれからどうすんの?藤山待つ?」


歩きながら圭吾くんが尋ねる。


「うん。今日は最後までいたっていう証拠を見せつけなきゃ!」


「ははっ。そうだな。じゃ、俺はこれで帰るわ」


「え?帰るの?」


「おう」


そう言って帰ろうとした圭吾くんだったが、彼は立ち止まった。



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