はじまりはミステイク



「その、天木」


「ん?どうしたの?」


「今日はありがとうな」


振り返った圭吾くんの笑顔が、すっごくすっごく眩しく見えた。


「剣道の試合を観に来るだけで満足してたようで、少し物足りなさがあった。でも、天木に言われて……剣道のことを前向きに考えてみようと思えたよ」


「ほんと?じゃあ剣道するの!?」


「それは分かんねーよ。じゃあなっ」


そう言って駆けて行った圭吾くん。


圭吾くんの答えは、まだ出ていない。


でも、圭吾くんの力になれたのかもしれない。


そう思うと、すっごく嬉しくなった。


「……やった。よっしゃっ」


小さくガッツポーズをして小声で喜びを噛み締める。


いつか、圭吾くんの剣道着姿を、剣道をしている姿を見れるといいな。


それから、しばらくミーティングをする藤山達を木陰で待った。


夕方だけど、夏の太陽は大敵。日焼けしたくないんだけどー、なんて思っていた時だった。



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