はじまりはミステイク



「待っててくれたの?」


藤山の声がした。


「ジュースでも奢ってもらおうかと」


「待って。試合したの俺ね?俺の方が奢ってもらう方かと」


「な、なんのことだか」


そう言いながら藤山を見る。


あぁ、もう剣道着姿じゃないんだ、と少しがっかり。


「帰りは制服なの?」


「うん。剣道着のがよかった?」


「だって、制服は見慣れてるもん」


こんなやり取りでもね、藤山といることが……嬉しく思える。


「このまま家帰るの?」


「いや、一度学校に戻るよ。荷物置いたりするからね」


ふーん、そっか。


「じゃあ、私帰るね」


「あまり、これ」


そう言った藤山から渡されたのは、オレンジジュースのペットボトル。


「待っててくれてありがとう。それに、今日も応援嬉しかった。帰らないかヒヤヒヤしたよ」


「ふんっ、帰らないって言ったじゃんっ」


「そうだったね。じゃ、俺行くよ。送れなくてごめんね」


そう言って、部員達の元へ駆けて行った藤山。



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