はじまりはミステイク
「でも本当、天木には感謝してる。マジでサンキューな!」
「私は何もしてないよ」
横から口出ししちゃったし、それに決断したのは圭吾くんだし。
「あの一押しがあって考えが変わったんだ。もう少ししたら練習見に来いよ」
「もちろん!楽しみにしてるねっ」
へへ、剣道着姿の圭吾くんかぁ。まだ想像はしないでおこう。
「圭吾先輩のこと言ってなかったっけ?」
翌日、とぼけたように言う藤山。
彼とは登校中にたまたま会い、圭吾くんの剣道部復帰のことを聞いたところだ。
「一言も言ってない!昨日聞いてビックリしたよ」
「俺も突然の入部だったから驚いたよ。よほどあまり効果あったみたいだね」
「へへっ、圭吾くんの役に立ったと思うと嬉しいや」
好きな人の力になれる。
小さなことでもとっても嬉しい。
「……あまりはさ」
「ん?」
「まだ圭吾先輩のこと」
「うん、好きだよ」
すらっと出てきた言葉だった。